研究課題
血小板凝集はがんの血行性転移を促進する。研究代表者は、がん細胞膜上に発現している新規血小板凝集促進因子(Aggrus)の遺伝子クローニングに世界で初めて成功していた。1、抗ヒトAggrusモノクローナル抗体の作製マウスにヒトAggrusリコンビナントタンパク質を免疫する事で、ヒトAggrusの細胞外ドメインを認識するモノクコーナル抗体を7種類樹立した。残念な事に、血小板凝集活性に必須なPLAG2ドメインを認識する抗体は、該当ドメインペプチドを免疫しても十分なタイターが得られず、樹立できなかった。樹立できた抗体のエピトープを同定するために、Aggrus断片分子を大腸菌に発現させ、その断片に対する反応性を検討する事で、30-36番目または64-82番目のペプチド部位を認識する事を明らかにした。2、Aggrus結合分子による血小板凝集阻害機構の解明研究代表者はこれまでに、Aggrus結合分子としてTetraspaninファミリー遺伝子の1つであるCD9を同定していた。CD9はTetraspanin Webと呼ばれる膜上の高分子複合体形成のオーガナイザーとして機能するが、AggrusもCD9と結合することでTetraspanin Webに取込まれ、その結果、取込まれたAggrusはその血小板凝集促進活性を失う事が明らかとなった。さらに、CD9上の膜貫通ドメイン1と2がAggrusとCD9の結合に関与しているが、この部位を欠失したCD9には血小板凝集抑制活性が認められず、転移抑制効果も認められなかった。この理由を検討した結果、膜貫通ドメイン1と2を欠失したCD9は、AggrusをTetraspanin Webへとリクルートする事ができず、その結果血小板凝集抑制活性や転移抑制活性を示さない事を明らかにした。
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