CD9はがん転移促進分子Aggrusの血小板凝集誘導活性を阻害する事を既に明らかにしている。そこで、CD9の断片タンパク質発現ベクターを構築し、Aggrusタンパク質との結合アッセイを行なった。その結果、CD9の膜貫通部位1と2を欠失したCD9はAggrusとの相互作用が認められないことが、免疫沈降法ならびに共焦点レーザー顕微鏡による共局在アッセイの結果確認された。Aggrusのプロモーター部位にはCpGアイランドが存在するため、Aggrus発現はメチル化により制御されている可能性が示唆されている。低転移細胞に脱メチル化剤5-aza-2'-deoxycitidineを処理することにより、Aggrus発現が亢進することを確認し、がん転移形成におけるメチル化の関与の一端が明らかとなった。リアルタイム遺伝子発現計測装置を用いることにより、長期にAggrus発現を抑制するsiRNAを検証したが、マウス転移モデル系に用いることが可能と考えられる長期抑制効果を示すsiRNAのデザインを得ることはできなかった。Aggrus遺伝子5'末端にEGFP遺伝子を付加したfusionタンパク質発現プラスミドを構築し、CHO細胞に遺伝子導入することで、細胞表面のみ蛍光を発する細胞株を樹立した。この細胞を用い、Aggrus依存的な肺へのトラップをin vivo imaging技術で可視化することに成功した。この肺へのトラップは、抗血小板薬で抑制されることが確認され、Aggrusは血小板凝集誘導によりがん転移を促進していることが確認された。
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