抗ヒトAggrus抗体樹立を目的に、大腸菌で発現させたヒトAggrus全長タンパク質、あるいはAggrusの血小板凝集誘導活性に必須なPLatelet AGgregation-stimulating domain (PLAGドメイン)を含むリコンビナントペプチドをマウスに免疫した。その結果、様々なエピトープを認識するモノクローナル抗体を5種類作製することに成功し、そのうちのYM-1抗体という1種類のモノクローナル抗体が、中和活性発揮に必須であることが示唆されているPLAG2ドメインを認識していることを見いだした。Aggrusの各種deletion mutantを作製することで、YM-1抗体のこれら変異タンパク質認識能を検討することにより、詳細な認識エピトープを同定した。さらに、Aggrus依存的な血小板凝集を測定するアッセイ系を用いて、YM-1抗体の血小板凝集中和活性を確認することに成功した。ただし、この抗体を産生するハイブリドーマの安定性が悪いために、安定した抗体取得が非常に難しく、新たな中和抗体の作製が必要とも考えられた。 また、血小板凝集を伴ったがん転移機構解析を目指して、HT1080細胞にAcGFP発現プラスミドを導入し、細胞内がGFPの蛍光を発する細胞株の樹立を行なった。樹立されたHT1080/AcGFP細胞を移植したマウスでの転移をin vivoで観察したが、転移先臓器である肺は皮膚表面から深く、そのままでは観察できなかった。そこで、肺を取り出して観察するex vivo法を検討した結果、肺にトラップされているがん細胞の蛍光を観察することに成功した。このex vivo系で、定量的に肺転移を観察することにも成功した。さらに、移植から摘出までの時間を変化させることで、転移初期過程の肺への物理的なトラップの時間変化を観察することに成功した。
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