チューブリン蛋白を標的とする環状ペプチドを基盤とする抗がん薬の創製研究であるが、がん組織に新生される未熟な血管内皮細胞が微小管を主体とした細胞骨格から成ることから、この内皮細胞を選択的に障害できる環状ペプチドの創薬研究を実施し、高活性な誘導体の創製を実施してきた。その中で開発された誘導体KPU-2/NPI-2358については、腫瘍新生血管内皮細胞障害剤(Vascular Disrupting Agent : VDA)として、米国にて第一相臨床試験が順調に進められてきたが、良好な結果を得たことから、平成21年3月より第二相臨床試験へ移行することが決定された。治験化合物NPI-2358を基盤に誘導体の合成研究については、フェニル環をベンゾフェノンに置換したもの(KPU-224)が高活性であるので、同環上の置換を中心に実施した。 その結果、ベンゾフェノン4`位にブロモ原子を有する新規誘導体KPU-134がNPI-2358を凌ぐ強力なチューブリン結合能を有することを見いだした。また、KPU-2/ NPI -2358のチューブリン脱重合作用の分子認識機構を解析するため、光応答性プローブとビオチンタグを導入した誘導体のケミカルバイオロジーを展開してきたが、benzophenone構造を有する高活性誘導体KPU-244のbenzophenone部にビオチン標識を付加したKPU-244-B1に、チューブリンに機能する活性があることを解明した。そしてこの化合物を用いて、チューブリンのフォトアフィニティー標識を行い、KPU-244-B2が光照射によりチューブリンをコルヒチン結合部位にて特異的に認識することを同定し、報告した。注射剤として水溶性の高いプロドラッグの創製については、合成法を検討中である。
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