チューブリン蛋白を標的とする環状ジペプチドを基盤とする抗がん薬創製研究で、がん組織に新生される未熟な血管内皮細胞の微小管を標的にすることで、内皮細胞機能を選択的に障害する薬剤の開発である。種々の環状ペプチド誘導体創製を実施してきた。開発した誘導体Plinabulinについては、腫瘍新生血管内皮細胞障害剤(Vascular Disrupting Agent : VDA)として、第2相臨床試験が世界規模で進行中。より強力な化合物の創製では、Plinabulinより30倍強力な誘導体KPU-133を見いだしているが、今年度は環状ジペプチドの一種で、チコーブリン関連蛋白(MAPS)に作用するトリプロスタチンの化学構造を基にした誘導体開発を実施したところ、殺細胞活性値はIC_<50>=400nMと若干弱いが、新規な環状ジペプチド骨格の創出に成功した。また、Plinabulinのチューブリン脱重合作用の分子レベルでの機構解析では、新たに光応答性プローブとビオチンタグを導入した新規なケミカルプローブでも、高解像度でチューブリンの2つのサブユニットを標識することが明らかとなった。したがって、両サブユニットの境界面でコルヒチン結合部位の近傍を認識していることがさらに支持される結果となった。Massによる詳細な解析は実施しているが成功していない。一方、Plinabulinの欠点である難水溶性の問題を解決すべく、水溶性プロドラッグの検討を実施してきた。Plinabulinは非常にコンパクトな分子のため、水溶性官能基の導入位置の決定に難儀したが、今期において、9mg/mLの高い水溶性を有するプロドラッグの創製に成功した。この化合物は、in vitroでエステラーゼの存在下にPlinabulinを再生することも確認できた。今後より高次の評価に付したい。
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