研究概要 |
C型肝炎の治療および肝癌への移行の予防薬への利用を目的とした平面型カテキンの誘導化を行った. 1)肝臓をターゲッティングとした平面型カテキン誘導体の設計・合成:平面型カテキンを肝臓に対して選択的に作用させる為には、脂溶性を増強させて肝排泄型の薬物へと誘導化することが必要である。そこで,長さ及び構造の異なるアルキル側鎖(C1〜C9)を導入して脂溶性を増強させた肝排泄型の平面型カテキン誘導体を合成した.また、C型肝炎ウイルスの膜から発生する活性酸素は肝癌への移行原因となるが,この活性酸素を強力に阻害できる抗酸化剤の開発を検討し,塩基性置換基および酸性置換基を側鎖に導入した平面型カテキン誘導体を合成した. 2)ラジカル消去能の化学的解析:合成した平面型カテキン誘導体の有機ラジカル、活性酸素(ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド)等に対するラジカル消去能を解析した.その結果,平面型カテキン誘導体は比較的短いアルキル側鎖(C2〜C5)を導入すると抗酸化活性は増強することがわかった.しかし長鎖アルキル基(C8,C9)を導入すると抗酸化活性の低下が見られた.一方,塩基性置換基を有する平面型カテキン誘導体は天然カテキンと比べて20倍以上の強力なラジカル消去活性を有することがわかった. 3)生物活性の解析:合成した平面型カテキン誘導体は、癌細胞(HL60)に対して強力な増殖阻害作用を示すことがわかった.アルキル側鎖を長くすると細胞増殖阻害作用は増加しC6,C7でもっとも強力な阻害効果がみられた. 以上,アルキル側鎖を導入した高脂溶性平面型カテキン誘導体は強力な抗酸化活性と癌細胞に対する増殖阻害効果を示すことがわかった.この結果はC型肝炎から肝癌への移行の予防に高脂溶性平面型カテキン誘導体が有効であることを示唆している.塩基性置換基を有する平面型カテキンはさらに強力な抗酸化活性を示すことから,現在高脂溶性平面型カテキン誘導体への塩基性置換基の導入を検討している.
|