研究課題
アルツハイマー病患者の脳内に高発現しているアミロイドβ蛋白質(Aβ)は、老人斑への凝集過程で活性酸素を発生して神経細胞毒性を示す。我々は,Aβの凝集阻害とアミロイド繊維から発生する活性酸素を消去する新たなアルツハイマー病の予防および治療薬の開発を目的として,強力なラジカル消去活性を有する平面型カテキンに様々なアルキル側鎖を導入した誘導体を設計・合成した.今回はカテキンにAβの凝集を阻害する構造としてプロトンドナーとアクセプターの両方を併せ持つニンヒドリン骨格を導入した化合物(1)を設計・合成し,抗酸化活性およびAβに対する作用を明らかにした。カテキンとニンヒドリンを1ステップにて反応後、HPLCにて精製し収率81%で1を得た。MassおよびNMRで構造解析した結果、1はニンヒドリンがカテキンのA環とC環に架橋結合している構造であることがわかった。活性酸素のモデルラジカルと1との反応について速度論的解析を行ったところ,カテキンの約2倍のラジカル消去活性を示した。また,Aβの凝集に対する阻害効果をチオフラビンT法によって解析すると、カテキンはAβの凝集に殆ど影響を与えないのに対して、1は強力に凝集を阻害した。そこで,次にAβの凝集によって引き起こされる神経細胞毒性に対する1の阻害効果を検討した。その結果,神経細胞(SH-SY5Y)をAβ存在下で培養すると細胞毒性がみられるが、1を添加すると毒性は大きく軽減された。一方、カテキンはAβによる神経細胞毒性に殆ど影響を与えなかった。以上,カテキンにニンヒドリンを付加させた1は強力な抗酸化作用を示すとともに、Aβの凝集反応の抑制とアミロイド繊維の溶解を促進し、Aβの凝集に由来する神経細胞毒性を大きく軽減したことからアルツハイマー病の酸化ストレスを介した脳機能障害の予防薬として期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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