研究課題
2003年3月飲用井戸水に混入したジフェニルアルシン酸(DPAA)による健康被害が明らかになり、その中毒症状として運動失調、ミオクローヌス、振戦などの小脳・脳幹症状と後頭葉、側頭葉由来の症状が見られた。また、DPAA暴露者の脳機能画像検査で小脳・脳幹と後頭葉の血流低下、小脳・脳幹・海馬の糖代謝低下が示されている。動物やヒトへのDPAA中毒の報告は皆無であり、中毒の症状、症候や毒性機序についての知見もない。適切な治療法を開発するには、生体におけるDPAAの毒性発現機構の解明やDPAAの生体影響評価の方法が重要であり、客観的な評価指標が必要である。DPAA暴露の動物モデル作成の予備実験で、DPAAによる生体反応や体内動態が齧歯類と霊長類で異なることが判明し、ヒトに近縁なサルで実験を行った。DPAA投与直後、1ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後の群を作成し、DPAA投与中の28日間の行動観察を行ったが、ヒトでみられた運動失調や不随意運動は認めなかった。脳血流、脳糖代謝を測定したところ、DPAA投与で脳血流が低下する群、脳血流が低下しない群、DPAAで脳糖代謝が低下する群、低下しない群に分かれた。大脳、小脳、脳幹、脊髄の病理組織検査では、明らかな異常がなかった。しかし、DPAAの排泄器官である肝臓組織において、肝内胆管の増生、グリソン鞘へのリンパ球浸潤などの所見がみられた。
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OPTROIVICS
巻: 29(347) ページ: 168-174