研究概要 |
パーキンソン病(PD)は、特定の遺伝子異常に起因する家族性PDと、遺伝子異常だけでは説明できず、神経毒のような環境因子の重要な関与が考えられている孤発性PDからなる。ある種の家族性PDでは、parkinという遺伝子に変異が存在し、その遺伝子がコードするParkinタンパク質のユビキチンE3リガーゼの機能が減弱することが発症原因であると考えられている。本年度は、昨年度に引き続き孤発性PD患者脳脊髄液で増加している脳内在性物質1-benzyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline(1BnTIQ)によるparkinの基質であるtubulinのユビキチン化阻害を調べるとともに、PDモデル作製に汎用されるMPP+についても同様の作用があるかについて調べた。抗tubulin抗体により免疫沈降し、抗ユビキチン化抗体でウェスタンブロットを行った結果、MPP+は1BnTIQと同様にSH-SY5Y細胞においてtubulinのユビキチン化阻害を引き起こし、その結果1%Nonidet P-40不溶性tubulin量は時間依存的に増加した。またparkinタンパク質自身もparkinの基質となるためparkinタンパク質の蓄積についても調べたところ、1%Nonidet P-40不溶性parkin量はtubulinと同様に時間依存的に増加した。以上の結果より、parkinおよびparkinの基質であるtubulinの蓄積は1BnTIQおよびMPP+といったPD関連物質に共通に認められる現象であり、これらタンパク質の蓄積が孤発性PD発症に関与している可能性が考えられる。
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