研究課題/領域番号 |
20390045
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
有吉 範高 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (00243957)
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研究分担者 |
北田 光一 千葉大学, 医学部附属病院, 教授 (90110345)
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キーワード | チェノピリジン / 重篤肝障害 / Idiosyncratic / HLA allele / 簡易遺伝子診断 / 臨床研究 |
研究概要 |
本研究の目的は、当初、本邦で血栓症治療および予防に長年使用されている抗血小板薬チクロピジン塩酸塩の服用によって、我が国では頻発するが、その原因が明らかでないため、予測が困難な肝障害を、チクロピジンの代謝的活性化に関与する薬物代謝酵素と抗原提示に関係するヒト白血球抗原(HLA)の遺伝子多型で予測できるか否かに関する検証的試験を実施すると共に、それが実証された場合は、チクロピジンの投与に先立ち遺伝子診断を行って肝障害の回避システムを構築し病院内で運用することであった。倫理委員会で当院患者を対象とする臨床研究が承認され(千大医総第5-33号)、チクロピジン誘発肝障害と有意な関連性が示されているHLA-A*3303の有無を院内(医療機関)において、簡便・迅速・低コストで診断できる方法の開発に成功した。しかしながら後継薬のクロピドグレルが承認されると、チクロピジンは殆ど使用されなくなったため、2年度目からは主たる標的薬物を同じチエノピリジン系抗血小板薬のクロピドグレルに変更して研究を継続した。一方3年度目の終盤には、理化学研究所からチクロピジン誘発肝障害の新たな原因遺伝子探求の共同研究の申し入れがあったため、本研究の初期に収集できた新たにチクロピジンを導入した患者検体で解析することとした。 最終年度は、まず理化学研究所から提供された情報に基づき標的SNPを解析する遺伝子多型診断法を開発し、開発した診断法で症例-対照研究を行った。その結果、統計学的に有意ではないものの、理化学研究所のデータと一致して、肝障害群で当該SNPを有するアレルが多い傾向があり、odds比は4.5であった。一方、クロピドグレル投与患者に関しては、さらに症例を追加したものの肝障害例が1%に満たず、症例-対照研究を行うためには他施設から肝障害患者の検体を収集しなければ研究期間内に結果を得ることができないと考えられたため、学会で共同研究の参加施設を募ったが、他施設も類似の頻度であり情報の精度や他施設のDNA試料を解析する倫理的問題から多施設共同研究は断念せざるを得なかった。そこで個々の症例を解析したところクロピドグレルで肝障害を呈した患者には代替処方としてチクロピシンが使用可能であり、両者の肝障害と関連するHLAは異なることが強く示唆された。
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