研究概要 |
(i)薬物の消化管吸収、(ii)薬物投与による腎毒性、および(iii)がんの治療・診断におけるトランスポーター・アダプターネットワークの役割を解析し、それぞれ以下に示す知見を得た。(i)βラクタム抗生物質cephalexinおよびcefiximeの消化管吸収におけるトランスポーター(oligopeptide transporter, PEPT1)とアダプター(PDZK1およびRab8)の役割を、それぞれpdzk1およびrab8遺伝子欠損マウスを用いin vivoで明らかとした。詳細な解析の結果、PDZK1はPEPT1とcarnitine/organic cation transporter, OCTN2の、Rab8はPEPT1とsodium/glucose cotransporter, SGLT1の制御因子であり、それぞれのトランスポーター基質の消化管吸収に影響することが示された。このうちOCTN2とPDZK1の複合体については、ポリロタキサンと有機カチオンの高分子複合体を用いることにより、PDZK1がOCTN2どうしの分子間距離を形成している可能性を示した。(ii)OCTN2の遺伝子変異マウスを用いることにより腎毒性を示すβラクタム抗生物質cephaloridineの腎分泌にOCTN2が主要な役割を果たすことを示し、liver-type fatty acid binding protein(L-FABP)遺伝子導入マウスが、その腎毒性を鋭敏に検知するツールとして有用であることを証明した。(iii)種々のがん細胞にPEPT1が高発現することを示し、その基質を利用することによりin vivoでがんの診断が可能であることを示した。
|