研究概要 |
薬物動態の個人差の原因となり得る新規遺伝子多型情報として、Copy Number Variation(CNV)に注目した。CNVは癌の薬剤耐性や病態との関連に注目されるが、当分野での評価は少なく、以下の知見を得た。(1)CNV解析(健常人):3遺伝子でCNVを同定した。CYP2A6遺伝子では多検体でCNの減少(ヘテロ欠失:20/42、ホモ欠失:3/42)が、ABCC2ではCN=4、CYP2E1ではCN=3の検体を特定した。ABCC2の増加はexon 23を中心とした領域の増幅であり、CNVが狭領域においても生じることが示唆された。(2)CNV解析(非小細胞肺癌組織):癌部と非癌部における薬物動態関連遺伝子のCNとmRNA発現量を比較した。CNでは癌部においてばらつきが大きく、癌部と非癌部でCNが異なることが示唆された。さらに患者背景(組織型、TNM分類、血管浸潤、リンパ管浸潤、腹膜浸潤、分化度)との関連を評価した。その結果、扁平上皮がんよりも腺癌で、リンパ管浸潤陰性よりも陽性で、癌部における高mRNA発現量を認めた。さらに、ABCC1,ABCC2,ABCC11のような耐性遺伝子では、少数ではあるがCNが大きく変化する検体が存在した。(3)代替calibrator vector(CV)の作成:calibratorを人工のvectorで代替して定量的なCNV解析を目指した。対象遺伝子としてCYP2D6を選択した。代替CVによる新規CNV解析法は簡便かつ迅速であり汎用的でありながら、従来法と遜色ない精度でCYP2D6遺伝子のコピー数を定量できることを確認した。さらに、本解析法を用いることで従来法より正確にCYP2D6遺伝子型を特定できることも確認した。本解析法は各遺伝子の機能予測に直結した遺伝子多型解析法として、実用性が充分あると判断される。
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