【研究の背景】胞胚期の予定心臓領域は胚盤葉上層外側後方に存在し、Nodal、FGFシグナルによって心臓中胚葉に分化し、原腸期にBMPによって決定を受け、拍動する心筋に分化する。また予定心臓細胞は原腸陥入前に上皮構造である胚盤葉上層内を外側から後方、後方から前方に移動する奇妙な細胞移動を行う(ポロネーズ運動)。これまでの研究で胚盤葉上層に特異的に発現している75遺伝子を同定している。今回の研究ではこれらの遺伝子のうち遺伝子78及び既知の遺伝子着目しポロネーズ運動の分子機構について検討を開始した。【結果】予定心臓細胞を含む胚盤葉上層外側後方の無血清培養系を用いてポロネーズ運動について検討した。クローン75に対するsiRNAを作成し、電気穿孔法を用いて外植体に導入し細胞移動ならびに心臓中胚葉分化について検討した。その結果si-clone75-5+6は、クローン75の発現を抑制し、外植体の細胞移動を抑制した。心臓中胚葉への分化は抑制しなかった。 この抑制効果はリコンビナント蛋白で回復したことからクローン75はポロネーズ運動に関係していることが示唆された。また、心臓中胚葉分化を誘導するNodal、FGFについても、種々のアンタゴニスト、siRNAを用いて検討した。その結果、Nodalシグナルのポロネーズ運動への関与が示唆された。これらの結果をin vivoに反映させるため、全胚培養をおこなったニワトリ胞胚の胚盤葉上層にDiIをpressure injectionし細胞移動を、蛍光実体顕微鏡で追跡するための予備実験を開始し、injectionの条件を決定した。【今後の展望】全胚培養を用いてin vivoでのポロネーズ運動に対するクローン75、Nodalの作用を検討する。また他のDD法で同定した他の遺伝子についても検討を行う。
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