研究課題
胞胚期の予定心臓領域は胚盤葉上層外側後方に存在し、Nodal、FGFシグナル、BPMの抑制シグナルによって決定を受け心臓中胚葉に分化する。また予定心臓中胚葉は隣接する内胚葉由来のBMPによって心筋へと分化する。予定心臓細胞は上記のシグナル分子によって分化、成熟を遂げるが、この発生過程で予定心臓細胞は胚盤葉上層の外側後方から後方正中領域を経由して原始線条の前方領域に移動する。この胚盤葉上層という上皮内で起こる奇妙な運動はポロネーズ運動として報告されているがそのシグナルや細胞機構は不明である。ニワトリ胚盤葉上層の全胚培養系とDiI標識法を用いて胚盤葉上層細胞の移動経路を可視化した。この実験系を用いてポロネーズ運動を制御する成長因子について検討したところNodalシグナルの抑制によって胚盤葉上層の移動は抑制された。この際、原始線条は形成されなかったが、Brachyury陽性の中胚葉細胞は形成され、Nodalシグナルは主に予定心臓細胞を含む中胚葉細胞の移動を制御するシグナルであることが判明した。またFGFシグナルは胚盤葉上層の移動には関与しないことが判明した。次に上皮の移動に係わることが知られている細胞ロゼットの形成について検討した。細胞ロゼットは、胚盤葉上層の細胞移動が起こっている領域に多く検出され、三次元構築によって2種類のロゼット形態の存在が明らかになった。さらに細胞ロゼットの形成はNodalシグナルの抑制によって抑制された。またNodalシグナルは胚盤葉上層を構成する上皮細胞を肥厚させることが判明した。以上の結果から、予定心臓細胞を含む予定中胚葉細胞の移動はNodalシグナルによって制御されていることが証明された。今後の課題は、胚盤葉上層細胞の肥厚、細胞ロゼットとポロネーズ運動の関係を明らかにすることである。
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