研究概要 |
目的:内皮細胞が特異的に蛍光蛋白を発現するトランスジェニック・ゼブラフィッシュを用いて,バイオイメージングにより脳の初期血管網形成過程を明らかにするとともに,脈管形成の責任遺伝子を同定し,脳脈管形成過程の分子機構を明らかにする. 結果:脳血管系の初期形成は,体幹部とは独立した過程であり,原始内頚動脈が前脳に達する以前に,独自の脈管形成から始まる.すなわち頭部では,6-9体節期に索状のflil陽性の細胞が左右2列確認され,童2体節期になると,眼胞の嘴側と尾側でそれぞれこぶ状のHey2陽性の細胞塊となる.嘴側の細胞塊からの血管新生で脳の動脈系(CrDI・CaDI)が形成され,尾側の細胞塊から内頚動脈が形成される.一方,15-18体節期になると眼胞と耳胞の間の神経管の腹側領域に散在したflil・flt4陽性の細胞群が出現し,これらの細胞が脳の静脈(PHBC)を形成する.さらに,この初期脳血管系のPHBCから正中腹側へ枝が伸び,それら隣接する枝がループを形成しつつ,そのループがつながることで脳底動脈(BA)が形成される.また,PHBCは前主静脈との連結部位から神経管に沿って尾側へ伸展していき,第一節間動脈につながる.つづいて,BAが第1節間動脈に連結し,原始脊椎動脈が形成される.これによって,初期の脳血管系と体幹の血管系の連結がなされる.BAを形成するPHBCの分枝が退縮した後,PHBCから後脳実質へ侵入しBAへつながるCtA(脳への侵入する最初の血管)が形成される.本研究により,脳の初期血管の脈管形成と血管新生の詳細を明らかにした.
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