研究概要 |
本研究では、心筋ミトコンドリア丙Caを制御するミトコンドリアNa/Ca交換の足量的機能解析と、ミトコンドリアと心筋細胞興奮・収縮連関の詳細かつ定量的なコンピュータシミュレーション解析を行い、マトリックスイオン濃度制御と心筋エネルギー代謝制御におけるミトコンドリアNa/Ca交換の役割解明を目的とする。平成21年度は、1.実験データに基づき、ミトコンドリアマトリックスのイオン(Ca, Na, K, H)濃度変化、ミトコンドリア代謝(TCA回路、酸化的リン酸化過程、基質輸送)、膜電位維持機構を正確に計算できるコンピュータモデルの開発を進めた。脱水素酵素、イオン輸送体及び基質輸送体におけるCaによるアロステリック制御機構を組み込む事で、Caによるミトコンドリア酸素消費増加等の実験データを良く再現できるようになった。2.細胞内Mgイオンの大部分はATPに結合し、遊離Mgイオン濃度は0.5-1mMに維持されている。ミトコンドリアATP産生が低下するような状況では細胞質遊離Mg濃度が上昇し種々の影響を与えることが知られている。細胞内Mgで制御されるタンパク質のうち、心筋細胞の静止膜電位と活動電位持続時間に強く影響する内向き整流性Kチャネルと細胞間コミュニケーションに重要なギャップ結合蛋白について、Mgによる詳細な制御モデルを作成し、ミトコンドリア代謝・Mg濃度変化と心筋細胞活動どの機能相関を解析できるコンピュータモデルを作成した。このうち内向き整流性Kチャネルについてのシミュレーション解析の一部を論文発表した。3.ミトコンドリアNa-Ca交換がリンパ球にも存在することを実験的に明らかにした。ミトコンドリアNa-Ca交換機能を抑制することで、抗原刺激後の細胞内Caの増加が抑制される事が明らかになった。成果の一部を学会報告した。
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