研究概要 |
本研究では、ミトコンドリアCa^<2+>を制御するミトコンドリア内膜Na/Ca交換の定量的機能解析と、ミトコンドリアと心筋細胞興奮・収縮連関の詳細かつ定量的なコンピュータシミュレーション解析を行い、マトリックスイオン濃度制御と心筋エネルギー代謝制御におけるミトコンドリアNa/Ca交換の役割解明を目的とする。平成22年度は、1.ミトコンドリアのイオン・代謝モデルの精緻化を進めた。さらに、このミトコンドリアモデルを簡単な心筋細胞モデルに組み込み、心筋細胞仕事量変化及び細胞質Ca^<2+>濃度変化に伴うミトコンドリアCa^<2+>濃度とミトコンドリアエネルギー代謝の変化を計算できる数理モデルを開発した。解析に結果、ミトコンドリア酵素・トランスポータのCa^<2+>による活性化が、心筋仕事量変化時のエネルギー代謝産物(PCr,ADP,リン酸,NADH)濃度の安定化に著明に寄与することが予測された。2.細胞内Mg^<2+>の大部分はATPに結合し、遊離Mg^<2+>濃度は0.5-1mMに維持されている。細胞質ATP及びADPによるMg^<2+>結合と遊離Mg^<2+>膿度の計算が行えるように、包括的心室筋細胞モデルを改良し、細胞質Mg^<2+>濃度がATP含量に依存するモデルを開発した。その結果、心筋虚血による細胞内ATP量減少は、遊離Mg^<2+>濃度を2~3倍に増加し、内向き整流性K^+チャネル、ギャップ結合機能に影響を与え得ることが予測された。3.リンパ球において、ミトコンドリアNa/Ca交換を抑制すると、抗原受容体刺激後の細胞質Ca^<2+>増加が抑制された。Na/Ca交換を介するミトコンドリアCa^<2+>フラックスが、抗原受容体刺激後のリンパ球Ca^<2+>応答を維持するのに重要であると考えられた。培養心筋細胞HL-1において、ミトコンドリアNa/Ca交換機能と、興奮-収縮連関との機能相関に関する研究を進めた。
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