研究概要 |
2型糖尿病と最も相関のある一塩基多型が認められた遺伝子の一つとしてCdkal1が同定されたが、その生理機能が全く不明の分子である。本研究では,Cdkal1の生理機能を明らかにし,また2型糖尿病発症分子機構を明らかにした。Cdkal1は,リジンに対応するtRNAの37番目アデニンをチオメチル化する酵素であることを突き止めた。Cdkal1の膵β細胞特異的欠損マウスでは,耐糖能ならびにブドウ糖応答性インスリン分泌がコントロールマウスと比較し低下していた。また,同マウスでは成熟インスリン量が低下していた。さらに同遺伝子欠損マウスに高脂肪食負荷を与えると,小胞体ストレスが上昇し,耐糖能のさらなる悪化,インスリン分泌低下が認められ,2型糖尿病を呈するようになった。本研究により,2型糖尿病の発症にtRNA修飾異常が関与していることが明らかになり,tRNA修飾酵素などを標的とした新たな糖尿病治療薬の開発が期待できることが示唆された。
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