筋性疼痛、特に機械痛覚過敏(圧痛)の末梢性機構を解明することが大きな目的である。その中で本研究は、最近申請者らのグループが遅発性筋痛モデルにおいて筋機械痛覚過敏に関わることを見出した筋由来神経成長因子(NGF)の役割を解明することを本研究の目的とする。1)L5脊髄神経損傷モデル(神経因性疼痛モデル)において長指伸筋(主にL4支配)、腓腹筋(主にL5支配)のいずれにも痛覚過敏が生じること、筋におけるNGF mRNAの発現が両者において増加傾向であることを明らかにした。2)寒冷ストレス負荷モデル(線維筋痛症モデル)においては、NGF mRNAの増大傾向は見られたが、内部標準として使用するGAPDHもストレス負荷により変化することが明らかになってしまい、他のものを検討中である。3)NGFが筋細径線維受容器を末梢性に感作する可能性を、取り出し標本における単一神経記録法により調べた。NGFの筋注前後で、機械刺激(0-196mN/10秒)に対する反応を調べたところ、PBS 注入の場合に比べ、10-20分後から反応が増大を開始し、観察を続けた2時間後まで増大していたことから、NGFは短時間の間に末梢性に筋細径線維受容器を機械刺激に対して感作することがあきらかになった。4)培養後根神経節細胞にパッチクランプを行い、マイクロマニピュレータによってガラス棒を動かし定量的に神経細胞に偏位を与えたところ、3パターン(速順応型、中間型、遅順応型)の内向き電流を観察することができた。少数例ではあるがガドリニウムにより電流が抑制できることを確認した。しかし、この電流が観察できる割合は培養条件によって異なるので、よりよい培養条件を探索中である。
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