研究課題/領域番号 |
20390066
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永島 計 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40275194)
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研究分担者 |
時澤 健 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 次席研究員 (00454083)
彼末 一之 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (50127213)
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キーワード | 浸透圧 / 行動性体温調節 / 正中視索前野 / 視床下部 / オペラント行動 / 脱水 / 快不快感 / 体温調節 |
研究概要 |
研究の目的は体温調節反応に対する、非体温性の要因、特に脱水時に見られる体液量低下や体液浸透圧の上昇による修飾を解析し、その神経メカニズムを明らかにすることである。また、動物実験とヒトによる実験を行うことで健康、医療科学への応用を強く意識して行った。特に熱中症の原因として、温熱感覚の鈍麻による、暑熱逃避行動の減弱があるのではないかという仮説を検証し、社会へのメッセージとすることである。[研究内容](1)動物実験 行動性体温調節の一つである暑熱逃避、寒冷探索行動、快適環境探索を定量化できる動物(マウス)実験システムを確立した。このシステムを用いて、暑熱逃避/寒冷探索行動は高浸透圧負荷により減弱することを明らかにした。また、快適な環境温度には大きく影響を与えないことが明らかになった。すなわち、高浸透圧負荷は、体温調節のための自発行動を滅弱させること、温熱的快適性は高体温にも関わらず変化しないことが明らかになった。この反応には脳視床下部外側部の温度感受性が関わっている可能性が示唆された。(2)ヒト実験 高張食塩水を負荷しながら36℃の温熱負荷を行い体温調節反応、温度感覚を生理心理学手法を用いて評価した。自律性の体温調節反応は高張食塩水負荷により抑制され、高体温になる。しかしこの際の温度感覚は非負荷時に比べて減弱していた。[結論と、それより得られる意義、重要性]温熱感覚を含めた行動性体温調節は未だ明らかでない部分が多い。高浸透圧負荷は、脱水時の血液浸透圧の上昇を一部再現する方法であると考えられる。 一般的に自律性体温調節の脱水による減弱は、行動によって補償されるものと考えられてきたが、自律性体温調節と同様に減弱することが明らかになった。運動時等、脱水をきたした際などは、自分の温度感覚に頼っていると熱中症など体温調が破綻する病態になりやすいことを強く示しており、社会への啓蒙が必要である。
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