研究課題
オレキシンは視床下部外側野に局在し、睡眠・覚醒の制御に非常に重要な役割をしている神経ペプチドである。今年度は、睡眠・覚醒の制御機構を明らかにするため、オレキシン産生細胞の制御機構について研究を進め、オレキシン産生神経の電気生理学的解析により、ムスカリン様受容体(M3受容体)を介して約30%のオレキシン産生神経が活性化されること、Vla受容体を介して、バソプレッシンにより活性化されること、TRH-1受容体を介してTRHにより活性化されることを明らかにした。これらの活性化には、非選択的カチオンチャネルの活性化が関与していた。一方、ノシセプチンによって抑制されることを明らかにした。またVla受容体を介した活性化は水分不足にともなう覚醒レベルの制御に関与することやTRHによる活性化は視床下部にTRHを投与した時の行動量の増加に関与していることが、オレキシン神経欠損マウスをもちいた実験から明らかになった。また、GABAb受容体によるオレキシン産生神経の制御が睡眠の安定性に非常に重要な役割をしていることを、GABAb1受容体のオレキシン神経特異的欠損マウスをもちいた実験により明らかにした。これらの実験により、オレキシン神経の制御機構および、その生理的意義の解明が進んだ。一方、オレキシン2受容体の活性化がレプチン感受性を制御していることをオレキシン過剰発現マウスとオレキシン2受容体欠損マウスをもちいた実験により明らかにした。このことによりオレキシンを介するエネルギー恒常性制御機構の一端が明らかになった。
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