研究概要 |
アルツハイマー病(AD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象疾患とし、1)神経細胞死機序解明の基礎研究と2)内在性神経細胞死抑制因子の基礎研究/前臨床試験研究を行った。 1.AD神経細胞死機序TGFβ2説の検証。TGFβ2を直接正常マウスあるいはV642IAPP knockin mouse海馬に注入し、神経細胞死を引き起こすことに成功した。2.TGFβ2説におけるPS1の役割の検討。当該細胞死シグナルに関連するPOSHがTGFβ2/APP細胞死シグナルの下流に位置する分子であることを見出した。一方、PS1と結合するMOCAはTGFβ2/APP/JNKシグナル伝達系のみならず、mutant PS1(N末及びC末)両者によって引き起こされる細胞死経路にも関与することを発見した。3.ヒューマニン(HN)様分子の同定あるいはHN受容体の基本性格の解明。HN抗体で免疫沈降される内在性20kD蛋白質をHNとほぼ同等の活性を示すHN様分子EHとして同定した。4.HN作用を有する小分子のスクリーニング。構造改変により活性の強いHN様小分子を同定したが、ED50はまだ1microM以上であり、さらに強い活性を有するコンパウンドを必要とする。5.HNの前臨床試験。(A)5XFAD, Cdk5 transgenic mouseは15ヶ月齢まで、実際神経細胞死を起こしていることを確認できなかった。今後さらに加齢を重ねて、神経細胞死が起こるか否か確認する。(B)Colivelinはpresynapticにはacetylcholine levelを上昇させることにより、postsynapticにはM1受容体シグナルを増強することによりADに関連する機能的な認知症状を改善することを明らかにした。6.ALS発症におけるER-stressとVAPBの役割検討。生理的UPRにおいて、VAPBはIRE1-XBP1経路に促進的に、PERK経路に抑制的に作用することを見出した。また、家族性ALSにリンクするP56S-VAPBは、この正常機能を失うのみならず、dominant-negative的に、同時に発現する正常VAPBの機能を抑制することで、この経路を介するUPRを機能不全状態にすることを見出した。
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