研究課題
本年度は脳の発達段階(胎生期~生後発達期)におけるDisrupted-in Schizophrenia1(DISC1)の発現低下が、成熟期のマウスの行動、脳機能や形態にどのような影響を及ぼすか検討し、ヒトの統合失調症病態に類似した症状を示すモデルマウスが作製可能か調べた。胎生14日目の胎児脳室帯にGFPを組み込んだDISC1 RNAiプラスミドをエレクトロポレーション法により処置した。生まれたマウスについて生後28日および56日に行動薬理学的、神経化学的および分子生物学的手法を用いて解析した。胎生14日目にGFPを組み込んだDISC1 RNAiプラスミドをエレクトロポレーション法により胎児脳室帯に処置し、4日後に抗GFP抗体で免疫染色したところ、注入領域でGFP陽性細胞が観察され、注入部位に限局してDISC1の発現が抑制されていることが示された。また、生後56日においては前頭前皮質のII/III層においてGFP陽性細胞が観察され、II/IIIおよびV/VI層においてチロシン水酸化酵素陽性細胞が減少していた。さらに、前頭前皮質におけるドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン含量を測定したところ、ドパミン含量のみ対照マウスと比較してDISC1発現抑制マウスで有意な低値を示し、また細胞外ドパミン量も少なかった。一方、このような障害は28日齢では観察されなかった。以上のことから、DISC1発現抑制によって成熟期において、前頭皮質におけるドパミン神経が機能低下することを確認した。次に行動薬理学的に認知機能試験およびプレパルスインヒビション(PPI)試験を行ったところ、DISCI発現抑制マウスにおいて有意な認知およびPPI障害が観察された。これらの障害は統合失調症の治療薬として使用されているクロザピン(3mg/kg ip)によって有意に改善された。このことから、このマウスは統合失調症様の症状を示している可能性が示唆された。今後はこのモデルの妥当性についてより詳細な検討を進めていく予定である。
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