アミノ酸はタンパク質やホルモン、神経伝達物質などの材料としてだけではなく、生体制御因子としても重要である。そこで本課題では哺乳類を対象として、アミノ酸量の変動を感知する機構を明らかにすることを目的として研究を行っている。アミノ酸感知・伝達シグナルの中心的因子はmTORである。本年度、私たちはオートファジー誘導におけるmTORの具体的役割を解析し、mTORは栄養依存的にオートファジー因子であるULK1およびAtg13をリン酸化すること明らかにした。これまでのところmTORの生理的基質は、S6キナーゼ、4E-BP1、PRAS40などの限られたもののみであったが、今回の成果から、ULK1、Atg13も新規mTOR基質であると言える。私たちはさらにアミノ酸によるmTOR制御機構を明らかにすべく、mTOR結合因子を網羅的にスクリーニングした。その結果、新規のmTOR結合因子を同定することができた。この因子のノックダウンによりアミノ酸添加によるmTOR活性化が阻害されたため、これは生理的なmTOR制御因子である可能性が示唆された。また、アミノ酸レベルの変動に応じる因子を取得するため、アミノ酸飢餓およびアミノ酸添加によってリン酸化の程度が変化するタンパク質を九州大学松本雅記博士、中山敬一博士と共同でスクリーニングを行っている。現在すでに多くの候補因子が取得されており、今後それらを個別に解析していく予定である。
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