本課題では生体制御因子としてとらえたアミノ酸の感知機構およびそのシグナル伝達機構を解析している。アミノ酸が制御することで知られている細胞機能のひとつとしてオートファジー(自食作用)がある。本研究課題の昨年度の実績から、栄養感知シグナルの中心的因子であるmTOR複合体が、オートファジー因子であるULK1-Atg13-FIP200複合体と直接会合することによって、オートファジーを抑制することを明らかにした。その研究の延長として、ULK1複合体に含まれるさらなる因子を探索したところ、新規にFLJ11773という因子を同定することに成功した。この因子は分裂酵母にまで保存されているものの、出芽酵母には存在しないものであった。これまで、出芽酵母と哺乳類のオートファジー因子は非常によく保存されていることが知られているため、この新規因子の存在はオートファジーの進化を考える上で興味深いものである。この新規因子をAtg101と命名し、さらに解析を進めたとこと、Atg101は確かにオートファゴソーム形成に必須であり、アミノ酸飢餓時にULK1-Atg13-FIP200複合体とともにオートファゴソーム前駆膜に局在していることが明らかとなった。一方、このULK1複合体はオートファジーの非常に初期の隔離膜に局在していることから、オートファゴソーム形成部位のマーカーとしても利用できることが明らかとなった。
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