研究課題/領域番号 |
20390081
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉川 潮 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環バイオシグナル研究センター, 教授 (40150354)
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研究分担者 |
鎌田 真司 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・バイオシグナル研究センター, 准教授 (20243214)
中嶋 昭雄 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・バイオシグナル研究センター, 助教 (70397818)
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キーワード | シグナル伝達 / mTOR / 栄養 / ホスファターゼ / ラパマイシン / アミノ酸 / PP242 / TIP41 |
研究概要 |
アミノ酸により活性制御を受けるプロテインキナーゼmTOR(免疫抑制剤ラパマイシン標的タンパク質)とタンパク質脱リン酸化反店との関係に着目し、栄養シグナリングの新たな側面を明らかにすることを目的とした。従来、出芽酵母ではTIP41(タンパク質ホスファターゼPP2Aの抑制分子TAP42と相互作用因子する分子TAP42-interacting protein of 41kDa)はTORの下流ホスファターゼを活性化することによりTORシグナリングを抑制することが知られていた。しかし、ほ乳類培養細胞にTIP41を高発現させるとアミノ酸枯渇時にみられるmTORC1基質のリン酸化の減少が抑圧され、またアミノ酸飢餓後のアミノ酸再添加によるmTOR基質のリン酸化の増加はTIP41のノックダウンにより有意に抑制された。従って、ほ乳類においてTIP41はmTORシグナリングに対して正の役割を果たすことが明らかとなった。一方、PP2Aと結合できない変異型TIP41の過剰発現では、野生型TIP41では観察されるアミノ酸枯渇時のmTORC1基質のリン酸化の減少が生じないことから、TIP41はPP2Aとの結合を介してmTORシグナリングに影響を与えていることが示された。また、新規旧TOR拮抗剤PP242によりアミノ酸枯渇時のTIP41過剰発現によるmTOR活性の維持が阻害されることを見いだした。これらの成果はTIP41のmTORシグナリングにおける作用点が、これまで考えられてきたPP2Aを介したmTOR基質の脱リン酸化の抑制だけでなくmTORの上流シグナルに存在することを示している。なお、新規mTOR結合タンパク質としてTti1を同定し、Tti1およびその結合パートナーTel2がmTOR複合体に含まれて、その活性を正に制御していることが明らかとなり、また蛋白質分解酵素であるカスパーゼと栄養シグナリングの関連を示唆する結果が得られた。
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