研究概要 |
本研究ではCuZn-SOD欠損マウスを用いて、細胞質酸化ストレスによる肝臓老化の分子機構を明らかにするために、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の初期病態における酸化ストレスの役割を調べた。メチオエン・ロリン欠乏食(MCD食)は肝臓内のシトクロームP450(CYP2E1)を介した肝障害により、脂肪肝、炎症、繊維化を引き起こすことが知られている。CuZn-SOD欠損マウスにMCD食を10週間与え、脂肪肝が炎症と繊維化を併せ持つ肝炎や肝硬変へ増悪するかどうか調べた。組織学的・生化学的解析の結果、予想外にCuZn-SOD欠損マウスは脂肪肝、繊維化および炎症に対し、耐性であることが明らかとなった。次に、肥満による肝障害におけるCuZn-SODの役割を明らかにするために、CuZn-SOD欠損マウスとob/obマウスを交配し、2重変異体マウスの作製を進めた。遺伝的レプチン欠損マウスであるob/obマウスはNASHを発症するモデルとして知られている。CuZn-SOD欠損雌マウスおよびob/obマウスは不妊であるため、2重ヘテロ接合体マウス同士の掛け合わせにより、2重変異体マウスの作出を進めた。その結果、2重変異体雄マウスの誕生する確率が1/32であるため、実験に用いる個体数の確保するため、大量の繁殖を進めた。交配の過程で、少数ながらob/ob,CuZn-SOD2重変異体マウスが得られた。ob/obマウスに比べて、体重が減少傾向であったが、ob/obマウスと同様に肥満を呈した。肝臓中のトリグリセライド量を調べたところ、ob/obマウスに比べ、著しく蓄積量が少ないことが明らかとなった。以上の結果から、CuZn-SOD欠損マウス肝臓は、摂餌および遺伝的過食負荷による肝障害に対し、耐性を示すことが示唆された、,次年度は、大規模なob/ob,CuZn-SOD2重変異体マウスを作出し、表現型の確認および、代謝量、行動量、内分泌ホルモン、肝臓遺伝子発現等を調べ、病態改善のメカニズムを調べる予定である。
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