研究概要 |
本研究ではCuZn-SOD欠損マウスを用いて、細胞質酸化ストレスによる肝臓老化の分子機構を明らかにするために、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の初期病態における細胞質酸化ストレスの役割を調べた。CuZn-SOD欠損マウスとob/obマウスを交配し、2重変異体マウスの作製を進めた。遺伝的レプチン欠損マウスであるob/obマウスはNASHを発症するモデルとして知られている。CuZn-SOD欠損雌マウスおよびob/obマウスは不妊であるため、2重ヘテロ接合体マウス同士の掛け合わせにより、2重変異体マウスの作出を進めた。その結果、2重変異体雄マウスの誕生する確率が1/32で、実験に用いる個体数の確保するため、大量の繁殖を進めた。交配の過程で、少数ながらob/ob,CuZn-SOD2重変異体マウスが得られた。ob/obマウスに比べて、体重が減少傾向であったが、ob/obマウスと同様に肥満を呈した。肝臓中のトリグリセライド量を調べたところ、ob/obマウスに比べ、著しく蓄積量が少ないことが明らかとなった。以上の結果から、CuZn-SOD欠損マウス肝臓は、摂餌および遺伝的過食負荷による肝障害に対し、耐性を示すことが示唆された。また大規模なob/ob,CuZn-SOD2重変異体マウスを作出し、表現型の確認および、代謝量、行動量等を調べた。その結果、予備試験結果を追認する結果となった。また、レプチン受容体欠損マウスであるdb/dbマウスとCuZn-SOD欠損マウスを交配し、2重変異体マウスの作製を進めた。その結果、ob/ob,CuZn-SOD2重変異体マウスと同様に、db/db,CuZn-SOD2重変異体マウスでも肝臓トリグリセライドの蓄積量が少なく、脂肪肝の改善を示した。以上の結果から、レプチンシグナル低下によるNASH様病態の発症に対し、CuZn-SOD欠損に伴う細胞質酸化ストレスが間接的または直接的に保護的に作用していることが示唆された。脂肪代謝に関わる遺伝子発現解析を進める予定である。
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