1)昨年度、CagAを用いた分子構造解析の結果、CagAは主に二つのドメインで構成され、生物活性に重要なC末端領域は自由度の高い不規則構造で構成されていることを明らかにした。また、C末端領域は不規則構造で構成されているにもかかわらず、全長CagAタンパク質と同様に細胞形態変化を誘導し、CagAは内因性不規則構造タンパク質であることが示唆されていた。そこで、CagAが内因性不規則構造タンパク質であることを明らかにするため、NMR分子滴定法を用いた解析を進めた。その結果、CagAの標的分子であるPAR1を用いたCagA C末端領域に対すNMR分子滴定解析を行ったところ、CagA C末端フラグメントはPAR1分子と相互作用することで一定の構造を維持していることを示す結果を得た。このことからCagAタンパク質は、生物活性発現に重要なEPIYA繰り返し領域において、内因性不規則タンパク質として存在していることが明らかになった。CagA/PAR1相互作用に関わるアミノ酸残基の同定を行うため、二重ラベル体CagA分子の調製を行い、現在、NMRによる構造解析を進めている。 2)これまでにCagA分子N末端領域の結晶化し、X線構造解析を進めた。組み換えCagA N末端フラグメントの大量精結を行い、複数の結晶を用いた構造解析の結果、解像度約3.5Aの解析結果を得た。現在、さらなる高解像度の解析像を得るため、解析に用いる結晶数を増やし、解析方法の検討等を行い解像度の改善を試みている。
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