研究課題/領域番号 |
20390093
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
谷澤 幸生 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00217142)
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研究分担者 |
太田 康晴 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (60448280)
江本 政弘 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (50294640)
湯尻 俊昭 山口大学, 医学部, 准教授 (80346551)
竹田 孔明 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60467793)
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キーワード | Wolfram症候群 / インスリン分泌 / 糖尿病 / エクソサイトーシス / 小胞体ストレス |
研究概要 |
Wolfram症候群は若年性の視神経萎縮とインスリン依存性糖尿病を主徴とし、WFS1遺伝子の欠損により発症する。患者は10歳前後で膵β細胞を選択的に喪失し、糖尿病を発症する。WFS1遺伝子はまた、その遺伝子内のSNPsが2型糖尿病発症のリスクを規定しており、2型糖尿病遺伝子としても重要である。従って、WFS1遺伝子の機能、その欠失によるβ細胞死のメカニズム解明、さらには治療法の開発はWolfram症候群のみならず、2型糖尿病においても重要である。 WFS1蛋白は小胞体に発現され、細胞内カルシウムホメオスターシス、小胞体ストレス応答に関与することが現在までの研究で明らかになっている。今回、我々は膵β細胞においてはWFS1蛋白が小胞体に加えて、インスリン分泌顆粒に存在することを見いだした。wfs1欠損マウスのβ細胞では、インスリン分泌顆粒の酸性化が低下し、インスリンのプロセッシングが障害される。されに興味深いことに、wfs1欠損マウスではインスリン分泌顆粒の細胞内での局在の変化が観察された。つまり、β細胞内のインスリン分泌顆粒の総数は変化していないが、細胞膜直下で、膜に接する分泌顆粒の数が減少していた。インスリン分泌顆粒の酸性化はインスリンのプロセッシングに重要であると同時に、インスリンのエクソサイトーシスにおいて、「プライミング現象」に関与することが示唆されている。細胞膜直下に存在するインスリン顆粒とそれらが「プライミング」されているか否かは同義ではないが、両者の関連を推測することは理にかなったことである。wfs1欠損マウスでは、β細胞量が進行性に減少すると同時に、あるいは、それ以前からブドウ糖応答性のインスリン分泌が障害されている。WFS1蛋白がインスリン分泌顆粒にも存在するという今回の知見は、WFS1蛋白のβ細胞での新たな機能を示唆するものであり、その異常がβ細胞機能障害をも説明しうる。 wfs1欠損マウスをモデルとしたWolfram症候群の治療法開発に関しては、以前にpioglitazoneが肥満により著しく加速される糖尿病発症を有効に抑制することを示しているが、その分子メカニズムについて解析を進めている。pioglitazoneで発現誘導される興味深い標的分子候補を同定している。また、新たな糖尿病治療薬である、インクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬の有効性について検討を進めている。
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