研究概要 |
1.インスリン刺激によるGLUT4トランスロケーションの分子メカニズム インスリン作用の中で最も重要な物は血糖降下作用である。それは主に骨格筋において、通常は細胞内膜分画に存在するGLUT4が細胞表面上に出て、細胞外のグルコースを細胞内に取り込むことにより起こる。 GLUT4を細胞内に繁留する分子としてTUG(Tether containing UBX domain for GULT4)が報告されている(Nature,2003,Bogan et al.)。我々はTUGがGLUT4小胞・Tubulinなどと複合体を形成していることを見出した。GLUT4小胞はこれらの分子が関与して、インスリン刺激により微小管上を移動し、細胞膜内ヘグルコースを取り込むと考えられた。しかし、インスリンシグナル伝達との関係を結ぶ因子は明らかになっていない。 2.糖尿痛になると、なぜ血中に切断されたインスリン受容体細胞外ドメイン【sIR;soluble insulin receptor(可溶性インスリン受容体)】が増加するのか 我々は高血糖が続くと血中にsIRが増加してくることを報告した(Diabetes,2007)。なぜ高血糖で血中sIRが増加するのかその分子メカニズムを明らかにするため、ヒト培養細胞を用いて細胞培養系での再現を試みた。各種ヒト培養細胞を用いたところ、ある種の細胞のみがmedium中にsIRを放出していることが明らかになった。しかしその濃度は,ヒト血清中の1/100程度であるので、通常のsIR測定ELISAでは測定できなかった。そこで、back groundを下げることにより超高感度ELISA測定系を作製することに成功した。この細胞を用い長時間高グルコース存在下で培養するとmedium中sIRが増加してくることが明らかとなった。現在その分子メカニズムを解析中である。
|