我々はいくつかのBmp(骨形成因子)リガンド、Bmpアンタゴニスト、ノギンの相互作用が胎児後端部形成を制御する事を示した。それらの異常が後肢融合等を含む症候(マーメイド症候群など)発症に寄与する事を示唆した。今年度は上記の実験系がこれまで鳥類胚で行なわれたので、ミュータントマウス系を駆使して実験を行なった。従来の鳥類胚においては、ノギンの過剰発現によってBmpシグナルを低下させ、これらが後肢の融合を引き起こすこと見出していた。マウスにおいてはBmp4などやBmpの主要なレセプターBmprIaをコンディショナルに遺伝子改変することによって後肢がやはり融合する事を見出した(未発表)。本計画は総排泄腔等に由来する器官形成におけるBmpシグナルの解明も提案していた。Bmpシグナルが膀胱形成に機能するか解明を進め、膀胱形成プロセスにおいて活性を有するCreラインを用いてBmpシグナルを改変した場合、Bmpレセプター(rIa)改変マウスにおいて膀胱平滑筋の形成阻害を見出した(未発表データ)。さらに興味ある事に、本実験系においては未分化間葉においてヘッジホッグシグナルを受容した際に初めてBmpレセプターを改変する条件付け遺伝子改変を開発した。この条件付け改変によって平滑筋層が無形成になる事から、未分化間葉では上皮由来のヘッジホッグに応答し、同間葉がBmpシグナルを受容する事が重要である事、即ち上皮由来のヘッジホッグシグナルから間葉のBmpシグナルのリレーが初めて示唆された(未発表データ)。
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