研究概要 |
タンパク質のユビキチン化修飾は、タンパク質分解、細胞内局在、シグナル伝達、DNA修復など多彩な細胞機能に関連する。これらの機能発現にはユビキチンの架橋様式の差違が深く関与し、Lys48型ポリユビキチン鎖は分解シグナルとして、Lys63型はシグナル伝達やDNA修復に機能することが知られている。我々はHOIL-1LとHOIPからなるRING型ユビキチンリガーゼ複合体(LUBAC)がユビキチンのN末端α-アミノ基を介する全く新しいタイプの直鎖状ポリユビキチン鎖を形成することを同定した。生理的にLUBACはNEMO(NF・κB essential modulator, IKKγ)を直鎖状ポリユビキチン化することでIκBキナーゼの活性化を導き、古典的NF-κB経路を活性化することを明らかにした(Nature Cell Biol, 2009)。本年度の研究として我々は、まずLUBACによるNF-κB経路活性化に必要とするNEMOの直鎖状ポリユビキチン鎖長の解析を行った。NEMOのC末端に1~7分子のコビキチンを直鎖状に連結し、NF-κB活性化能を調べた結果、2分子以上のユビキチン付加で十分なNF-κB活性化を導くことが明らかになった。これまで、タンパク質分解では4分子以上のポリユビキチン化が必要と報告されていたが、NF-κB活性化に必要なユビキチン鎖長が初めて明らかになった。さらに、直鎖状ポリユビキチン化修飾を負に制御する脱ユビキチン化酵素の解析をおこない、円柱腫の原因遺伝子であるCYLDがLys63型同様に直鎖状ポリユビキチン鎖を分解し、LUBACによるNF-κB経路活性化を抑制することを見いだした。これらの成果は平成21年度日本生化学会大会にて発表し、現在投稿準備中である。
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