研究課題
本研究の目的は、エピ変異の発症機序および個々のインプリンティング遺伝子の生理的役割を解明し、その成果を先天奇形症候群および成長障害の診断・治療に役立てることである。具体的には下記のとおりである。●upd(14)pat表現陽性患者胎盤における定量的遺伝子発現解析出生前診断された患者から入手した新鮮な凍結胎盤標本を使ってmRNAを抽出し、定量PCR法でこの領域のインプリンティング遺伝子の発現量を定量した。upd(14)pat関連疾患患者の新鮮凍結サンプルを用いた解析の報告はこれまでになく、ヒト胎盤における14番染色体上のインプリンティング遺伝子の発現調節機構を明らかにすることができた。今後はこれらのサンプルを用いて表現型に関連する遺伝子群をマイクロアレイ解析にて同定するべく準備を進めている。●RTL1、DLK1の胎盤発現部位の検討平成20年度はウサギを用いてヒトRTL1抗体、DLK1抗体を作成した。現在、免疫染色法による発現部位と組織異常の関連の検索を開始している。胎盤での検討では、RTL1は胎児側血管内皮細胞に発現していることが明らかとなった。●IG-DMRエピ変異発症の原因解析われわれは、4例のエピ変異を同定している。このようなエピ変異は、他のインプリンティング関連疾患でも同定されているが、その原因についてはいまだ明らかになっていない。われわれは平成20年度にupd(14)pat表現型陽性のIG-DMR領域のみの微小欠失家系とMEG3-DMRのみ欠失の症例を同定した。これらの症例の解析においてMEG3-DMRが決定的な役割を果たしていることを見出し、この領域の遺伝子制御機構を明らかにすることができた。
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