研究課題
2008年以降の研究の進展にともない、IG-DMRのみを欠失し14番染色体父親性ダイソミー(upd(14)pat)表現型を体と胎盤の両者において示した症例およびMEG3-DMRのみを欠失しupd(14)pat表現型を体においてのみ示した症例を同定し、この2症例の詳細な解析から以下のことを明らかとした(PLoS Genetics accepted)。(1)IG-DMRは個体と胎盤の両者でDMRとなっているが、MEG3-DMRは個体でのみDMRとなっており胎盤では低メチル化状態にある。(2)IG-DMRは個体においてMEG3-DMRのメチル化パターンを支配する。(3)個体では母親由来アレルのMEG3-DMRが全インプリンティング遺伝子の発現パターンを制御し、胎盤では母親由来アレルのIG-DMRが全インプリンティング遺伝子の発現パターンを直接制御する。(4)MEG3-DMR周辺には様々な転写制御作用を有するCTCF蛋白結合領域が7ヵ所存在し、そのうち2ヵ所がMEG3-DMRの性質を有する。さらに、未報告であるが、我々は2例のupd(14)pat患者の新鮮凍結胎盤サンプルを入手し定量発現解析を行った。患者において、母性発現遺伝子(MEG3,MEG8,microRNAs)の発現は消失し、父性発現遺伝子DLK1は、正常胎盤に比較し2倍から4倍、RTL1は約10倍の発現量の増加を認めた。ヒトにおいてRTL1はRTL1as上に存在する5つのmicroRNAによって抑制されていることは明らかとなっていたが、詳細な検討はされていなかった。Upd(14)pat患者と同様にRtl1が両アレルから発現しRtl1 asの発現のないマウスにおいて、Rtl1発現は約4.5倍であり、ヒトとマウスにおけるRTL1 asの抑制効果の差異を明確にした。さらにRTL1抗体を作成し、Upd(14)pat患者胎盤、正常胎盤を用いて免疫染色を行った結果、RTL1がマウスと同様胎児側血管内皮細胞に発現していることをヒトではじめて同定した。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Journal of Pediatrics 155(6)
ページ: 900-903
Genomics 93(5)
ページ: 461-472
PLoS Genetics (accepted)
Journal of Medical Genetics (accepted)
http://www.nch.go.jp/endocrinology/upd14/index.html