研究課題
母性発現遺伝子であるRTL1as上に存在するmicroRNAによる父性発現遺伝子であるRTL1に対するRNA干渉による抑制機構はマウスでは明らかであるが、ヒトでは不明である。また、14番染色体インプリンティング遺伝子の胎盤における機能も不明である。そこで、胎盤過形成を呈する14番染色体父親性ダイソミー(upd(14)pat)および類縁疾患患者の胎盤解析、本領域の父親由来アレルの重複をもつ症例の胎盤表現型解析から、ヒト14番染色体インプリンティング遺伝子の胎盤における機能、遺伝子発現制御機構を明らかにすることを目的に研究を進めた。14番染色体インプリンティング遺伝子のDLK1とRTL1は父親由来アレルから発現しタンパクをコードする。これらの遺伝子の免疫染色では、ともに、ヒト胎盤絨毛内の血管内皮細胞に限局した発現を認めた。さらに、upd(14)patに特徴的な胎盤過形成を認めるupd(14)patの2症例、微小欠失の1症例において、RTL1は全例で過剰発現を、DLK1はupd(14)pat症例にのみ過剰発現を認めた。さらに、2例のupd(14)pat胎盤を用いた発現解析は、DLK1において約3-4倍、RTL1において10倍-34倍の過剰発現、母性発現遺伝子の発現消失を示した。以上の結果は、RTL1の過剰発現がupd(14)patに特徴的な胎盤過形成を引き起こしていることを示している。さらに、14番染色体インプリンティング領域の父親由来の重複症例において、胎盤過形成が認められていないことから、母親由来のRTL1as上のmicroRNAsがRNA干渉によりトランスに父親由来の2コピーのRTL1の発現を胎盤過形成が生じる閾値以下に抑制したと考えられ、RTL1as上に存在する5つのmicroRNAがRTL1をRNA干渉のメカニズムで抑制することをヒトで初めて明らかとした。
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