研究概要 |
アテローム血栓症患者より採取された病理標本と動物モデルを用いて、下記の病理学的検討を行った。 1)ステント血栓症の発症における炎症性サイトカインの関与:薬剤溶出性ステント装着後のステント血栓症の血栓の組成について、吸引血栓標本を用いて、病理組織学的検討を行った。その結果、血栓は血小板とともに多量のフィブリンから成ること。また血栓形成にはCRP,PTX3,IL-6,-10などの炎症性サイトカイン群の発現に加えて血栓表層にはCD34陽性細胞が多数観察され、炎症性機序加えて前駆細胞の関与も推察された。 2)プラーク破綻と血栓の形成・増大における血流の相関:血流の変動はプラーク破綻や血栓形成の促進に作用するが、その機序の詳細は不明である。血流変動により、プラーク破綻と閉塞性血栓が誘発されるアテローム血栓症の動物モデルを確立し、コンピュータによる血管壁・血流シュミレーションを用いて、プラーク破綻の機序を検討した。その結果、血流によるプラーク破綻は、壁シェアストレスの振動変化に加えて、プラークに作用する乱流強度が強く関与することが示唆された。 3)CRP(C反応性蛋白)による血栓形成への作用:血中CRP濃度は心血管イベント発症の予測因子とされるが、アテローム血栓症の発生病態への関与は不明である。本研究では、ヒト型CRPを肝臓で高発現させたトランスジェニック(Tg)家兎を用いて、CRPの血栓形成への作用を検討した。その結果、血中CRP濃度が50mg/L以上のTg家兎において、血栓形成が有意に促進された。この機序について、同動物モデルと培養細胞を用いて検討し、動脈硬化巣に沈着した高濃度のCRPが、硬化巣内の平滑筋細胞の組織因子発現を亢進することを明らかにした。
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