研究概要 |
1. 上皮間葉転換形質に関連したmicroRNA、転写因子の解析:非小細胞肺癌40株においてE-cadherinの発現と相関あるいは逆相関するmicroRNAをいくつか同定した。このなかにはすでに報告されているmir-200familyのほか、まだ機能の明らかになっていないmicroRNAも含まれていた。核内転写因子Zeb1,Snailの発現がE-cadherinと逆相関することも確認した。 2. 上皮間葉転換形質とEGFR,KRAS:肺腺癌の代表的癌遺伝子であるEGFR,KRAS,EML4-ALKは相互排他的な関係にあり、このような分子異常により肺腺癌を分類する試みが行われている。本邦の肺腺癌に多いEGFR、KRASの変異を有する肺腺癌についてみた場合、EGFRを有する肺腺癌では、上皮間葉転換形質を示す頻度が相対的に低いという興味ある結果を得た。現在、EGFR,KRASのそれぞれについて、どのような付加的遺伝子異常が上皮間葉転換形質に関係しているか、さらに検討を進めている。 3. 化合物ライブラリーによるスクリーニング:上皮間葉転換形質を示す肺癌を含む非小細胞肺癌10株について、化合物ライブラリーによる分子標的治療薬のスクリーニングを行い、これまでにいくつか有望なlead compoundをみいだしてきている。今年度は、これらlead compoundについて、さらに非小細胞肺癌40株における薬剤感受性を調べ、細胞株の遺伝子発現プロファイルやゲノムワイドなコピー数のデータとの関連性を検討した。今後は、薬剤感受性を予測するバイオマーカーの探索を行うとともに、in vivoにおける効果についても検討を行う。
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