研究概要 |
上皮間葉転換形質とクロマチンレモデリング因子:SWI/SNF familyクロマチンレモデリング因子BRG-1,BRMはepigenetic機構により細胞分化を制御しているが、EMTへの関与をみた検討はない。BRG-1,BRMの発現低下は、肺腺癌細胞40例中それぞれ9例(22.5%)、17例{42.5%)、肺腺癌組織93例中それぞれ11例(11.8%)、16例(17.2%)にみられた。BRG-1,BRMの発現低下とE-CadherinならびにCK7,TTF-1の発現低下との間に強い相関があり、BRG-1,BRMの発現低下が上皮分化プログラムの異常とEMTを誘導している可能性が示唆された。 上皮間葉転換形質とnon-coding RNA : EMT形質を示す肺腺癌で過剰発現している14遺伝子中に,HoxC6、HoxC10が含まれていた。そこでnon-noding RNA HOTAIRがHOX遺伝子群の発現調節している可能性(Gupta et al. Nature 2010)について検証を行ったところ、HOTA1RとHoxC6,HoxC10の間に正の相関を認めた。HOTAIRの過剰発現は、HoxC6,HoxC10を介したE-cadherinの低下を通じて癌細胞の進展に関与している可能性がある。 上皮間葉転換形質とZEB1:転写因子ZEB1はE-cadherinの発現抑制、EMTに関与すると考えられているが、ヒトの癌組織での解析は極めて少ない。肺癌組織でのZEB1の発現を免疫染色で検討したところ、腺癌でのZEB1発現は主に問質の線維芽細胞にみられ、癌細胞での強発現はなかった。一方、大細胞癌ないし多形癌では10例(33%)において癌細胞の核にZEB1の発現を認めた。ZEB1の肺癌における関与は形態的にかなり未分化な癌に限られているこが判明した。
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