研究概要 |
癌遺伝子であるALKの転座(EML4-ALK融合遺伝子)により発がんしていると考えられる肺癌が報告された。我々はこれまでに40例を超えるALK転座肺癌を見出した。興味深いことに、ALK融合遺伝子肺癌にはEGFR変異、ras変異、c-met異常を持つ症例がなかった。このことは、ALK転座は、EGFR変異、ras変異、c-met異常と相互に排他的であることを示しており、肺癌がキナーゼ系遺伝子の変異により相互に排他的な亜型に分類される可能性を示唆している。 上記の事実を背景として、本研究では、キナーゼ系癌遺伝子の変異により肺腺癌を分類できる可能性を検討してきた。これまでのところ、K-ras変異、EGFR変異を持つALK肺癌は見られず、特徴的癌遺伝子による肺腺癌の分類が可能であることが確かめられつつある. 最終年度である本年度は、肺の早期癌である細気管支肺胞上皮癌(BAC,ALK転座無し、n=10)とALK融合遺伝子肺癌(n=4)におけるRTK下流シグナル伝達系の特徴を、リン酸化抗体を用いて調べた。BACではAKT経路が10%(1/10),MAPK経路が50%(5/10)であり、ALK融合遺伝子肺癌ではAKT経路が75%(3/4),MAPK経路が0%(0/4)であった。BACとALK融合遺伝子肺癌は、いずれもTTF-1陽性の、非喫煙者型肺癌であるが、BACとALK肺癌とでは、増殖シグナルの使い方が大きく異なることが示唆された。
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