研究概要 |
樹状細胞(DC)からの抗炎症性サイトカインIL-10産生に,炎症性サイトカインのTNF-αが必要であることのメカニズムについて,TNF-α-/-マウスを用い、シグナルの面から検討した.その結果,外来性に添加したTNF-αは,TNF-α-/-マウス由来DCの低下していたToll様受容体(TLR)刺激によるIL-10産生を回復させ,この際Erk,p38MAPK(p38),Akt等の活性化の回復を伴うことが判明した.この知見を支持するごとく,Erk,p38,PI3Kの阻害剤は,TLRリガンド刺激による野生型DCからのIL-10産生を低下させ,これらのキナーゼがTNF-α受容体(TNFRI)下流にあってIL-10産生に関与していることを明らかにした.NKT細胞はTNF-αを産生することから,DCからのIL-10産生にも影響を与える可能性が高く,新たなフィードバック制御の可能性が示唆された(実験計画2関連).因にTNF-α-/-マウスではiNKT細胞自体も減少していた.一方病態モデルの解析から,MR1/ApoE二重欠損マウスではApoE単独欠損マウスよりも動脈硬化症の病巣面積は有意に拡大することが明らかとなった.この背景には,CD1d拘束性NKT細胞(NKT)の若齢からの自然活性化と,老齢マウスでの疲弊によるアナジーが存在することが判明した.MRI分子の欠損により,MU拘束性NKT細胞(MAIT)が欠損するが,野生型ではMAITを介したNKTの活性制御により病巣進展の抑制がなされていると推測された(MAIT←→NKTの直接あるいはDCを介在した間接的な相互制御).また,MAITが動脈硬化病巣の進展を直接抑制する可能性も残されており,細胞移入による検討が必要である(実験計画3関連).
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