研究課題/領域番号 |
20390108
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹原 正清 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (20154015)
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研究分担者 |
森 寿 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 教授 (00239617)
石井 陽子 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 准教授 (00361949)
濱島 丈 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 助教 (80467092)
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キーワード | 高次脳機能 / PDGF / 受容体 / 虚血 / 修復 |
研究概要 |
本研究は、脳に発現する血小板由来増殖因子(PDGF)が、高次脳機能の維持や、損傷脳の再生にどのように関与するのかを解明することを目的にしている。本年は、4年計画の4年目であり、論文として報告した、あるいはすべき結果を得つつある。 1)これまでPDGF受容体(PDGFR)-βが神経伝達物質の機能制御を介して高次脳機能に密接に関与することが疑われてきた。本研究で、神経組織特異的に同遺伝子の発現を抑制したところ、大脳の辺縁系におけるGABA系神経細胞の減少がみられた。これに対応して、マウスの認知能力や社会行動の異常が出現した。脳波の異常も見られた。PDGFR-βの神経組織における欠損が人の自閉症類似の症状を呈していることが明らかになった。今後、統合失調症や自閉症の研究を遂行するための重要なモデルとなりうることを明らかにした。 2)神経幹細胞の増殖と分化は成体脳の認知能力等の高次脳機能維持に重要である。PDGFR-β発現を抑制した神経幹細胞における、自己複製能力が著しく低下することを明らかにした。また、神経細胞への分化も減少した。これまでの研究結果とともに、成熟した神経細胞とさらには神経幹細胞でPDGFシグナルがそれぞれ重要であることが明らかとなった。 3)上記の研究過程で、さらに、遺伝子改変マウスを使った研究から、PDGFR-βを介するシグナルが糖尿病性腎症の進行を促進すること、同シグナルが間葉系細胞におけるエリソロポエチン産生を誘導させることが腫瘍の血管新生を促し、結果として腫瘍の発育が促進されることを明らかにした。 4)PDGFR-αには、脳において、PDGFR-βとは全く異なった役割を果たすことが明らかになった。さらに今後の研究が必要である。
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