研究概要 |
DCIR1は細胞内にITIMを有するII型Cタイプレクチンであり、相同性が高く細胞質内にITAMを有するDCAR2と共にPaired Immuno Receptorをなすと考えられている。そのため、このDCIR1/DCAR2は、糖リガンドに対する正負のシグナルバランスの制御という観点から注目される。そこで、本研究では最近入手可能となった抗DCIR単クローン抗体を用いて、その特異性と生体におけるDCIR1の発現パターンを解析した。 トランスフェクタントを用いた交叉反応の確認から、他のDCIR family分子DCIR2~4、DCAR1,2、Dectin-2には交叉しないDCIR1特異的抗体を見出した。これを用いてWestern blottingやFACS解析を行い、B細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞など多くの細胞種に発現されていることが明らかになった。CD11b陽性ミエロイド系細胞においてDCIR1分子の多くは細胞内に多く分布していたが、LPSやTNF-αなどで刺激すると、細胞表面への発現が上昇することが示された。さらにin vivoにおいても、炎症性の刺激によりミエロイド系細胞での発現上昇が認められた。ヒトDCIRにおいても、HL-60細胞から好中球様細胞への分化誘導系で検討したところ、HL-60では細胞内に、好中球への分化が進むにつれて細胞表面に発現されることが確認された。また、V5-tag付加mDCIR1トランスフェクタントにおいて、anti-V5抗体によりmDCIR1を架橋刺激すると、mDCIR1特異的にチロシンリン酸化が誘導されることも確認された。 細胞内ITIMによるリン酸化の抑制能と考え合わせると、DCIR1は免疫活性化時における負のフィードバック制御に関わっている可能性を示唆している。
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