研究課題/領域番号 |
20390113
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
竹屋 元裕 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (90155052)
|
研究分担者 |
坂下 直実 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (90284752)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (40449921)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (70452886)
|
キーワード | マクロファージの活性化 / オルタナティブ活性化マクロファージ / 腫瘍内浸潤マクロファージ / STAT3 / 天然化合物 / corosolic acid / CDI63 / CD204 |
研究概要 |
マクロファージの活性化には、古典的活性化(M1経路)とオルタナティブ活性化(M2経路)が存在し、前者は炎症促進性に機能し、後者は炎症抑制性に機能するともに血管新生を誘導し腫瘍増殖を促進することがわかってきた。本研究では、オルタナティブ活性化マクロファージ(M2Mφ)のマーカーであるヘモグロビンスカベンジャー受容体(CD163)やクラスAスカベンジャー受容体(CD204)を指標として用いてヒト病理組織検体を解析し、これまで神経膠腫や卵巣癌においてM2Mφの腫瘍内浸潤が腫瘍の増殖と密接に関連することを明らかにした。本年度は解析疾患の範囲を広げ、肝内胆管癌ではM2Mφの浸潤度と非再発生存率に負の相関があること、また血管免疫芽球型T細胞リンパ腫や腎淡明細胞癌ではM2Mφの浸潤と予後に密接な関連があることを見いだした。さらに卵巣癌患者の腹水中の細胞や培養細胞を用いて、腹腔内のM2Mφが腹膜播種を促進することを示すとともに、M2Mφによる腫瘍細胞の増殖誘導にsignal transducer and activator of transcription-3 (STAT3)の活性化が関与することを明らかにした。 このような解析結果に基づき、マクロファージの活性化を制御することによって腫瘍増殖を抑制することが可能であると考え、マクロファージのオルタナティブ活性化を抑制する天然化合物のスクリーニングを行った。その結果、バナバやビワに含まれるcorosolic acidが膠芽腫細胞のSTAT3の活性化を阻害し、腫瘍細胞増殖を抑制する事を明らかにした。さらにタマネギの成分であるonionin Aにもマクロファージのオルタナティブ活性化を抑制する作用があることを見いだした。今後、これらの化合物を用いて移植腫瘍を用いたin vivoの解析を加えて、Mφの活性化制御による治療法開発に発展させたい。
|