研究概要 |
細胞膜結合型セリンプロテアーゼインヒビターHAI-1とその標的プロテアーゼによる細胞周囲微小環境での生理活性物質プロセッシング制御と、その破綻によって生じる病態を、遺伝子改変マウスを用いて解析し、以下の成果を得た。 (1) HGF activator(HGFA)によって活性化されるHGF以外の生理活性物質として、macrophage stimulating proteinを同定した(FEBSJ276:3481-90,2009)。この成果をうけて、FEBSJ誌よりHGFAに関する総説を依頼され執筆した。 (2) HAI-1KOマウスの表皮における魚鱗癬様病変について超微形態的検討を行い、HAI-1欠損に伴い表皮の細胞間微細構造が大きく変化することを明らかにした。 (3) HAI-1の消化管および呼吸器上皮における機能を明らかにするための、条件付きHAI-1KOマウスの系を作成し、平成21年度は以下の成果を得た。 (1) 腸管特異的HAI-1KOマウスを世界に先駆け作成した。 (2) 腸管特異的HAI-1KOマウスを用いて、以下の成果を得た:(1) DSS投与による炎症性腸疾患モデルを作成し、HAI-1欠損によって腸管炎症が重症化することを明らかにした。(2) 化学発癌モデルの作成し、化学発癌に対する、HAI-1欠損の影響を検討する実験を開始した。(3) APC欠損マウスとの交配を開始し、APC欠損に伴う発癌に対する、HAI-1欠損の影響を検討する実験を開始した。 (4) 肺線維症進展におけるHGFA活性の意義についてマウスモデルで検証し報告した(AmJ Respir Cell Mol Biol 42:286-93,2010)。 これらの研究を通じ、HGFAおよびHAI-1の生体内機能の一端が明らかになり、臨床応用に向けた可能性探索が可能となった。
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