研究課題/領域番号 |
20390114
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
片岡 寛章 宮崎大学, 医学部, 教授 (10214321)
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研究分担者 |
竹田 直樹 熊本大学, 生命資源・研究支援センター, 助教 (90304998)
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キーワード | HAI-1 / 上皮細胞 / conditional knockout / 膜型プロテアーゼインヒビター / 膜型プロテアーゼ / 上皮形態形成 / HGF activator / matriptase |
研究概要 |
上皮細胞に特異的に発現している細胞膜結合型セリンプロテアーゼインヒビターHAI-1とその標的プロテアーゼによる生理活性物質プロセッシング制御と、その破綻によって生じる上皮組織・細胞の病態を、遺伝子改変マウスや培養上皮系癌細胞を用いて解析した。 (1)HAI-1の諸臓器上皮組織における機能を明らかにするため、条件付きHAI-1 KOマウスの系を世界に先駆け作成した。これを用いて平成22年度は以下の成果を得た。 (1)腸管特異的HAI-1 KOマウスの組織を詳細に観察し、盲腸を含む近位大腸上皮に形態学的異常が生じ、粘膜透過性が亢進することを明らかにした。 (2)DSS投与による炎症性腸疾患モデルを作成したところ、腸管HAI-1欠損マウスは有意に生存率が低下し、また、軽度傷害モデルにおいても傷害後の粘膜再生が遅れることを明らかにした。 (3)化学発癌刺激による大腸発癌率が腸管HAI-1欠損マウスにおいて増加することを見出した。 (4)APC変異マウスとの交配を行い、APC失活に伴う腸管腫瘍形成における腸管HAI-1欠損の影響を検討した。その結果小腸腫瘍形成率が明らかに亢進することを見出した。 (5)肺気管支上皮特異的HAI-1欠損マウスを作製した。 (2)上皮系癌細胞の進展におけるHAI-1の意義を解明するために、培養膵癌細胞株を用いてHAI-1遺伝子ノックダウンおよび強制発現を行い、以下の成果を得た。 (1)一部の上皮系癌細胞株においてHAI-1欠失は上皮間葉移行をひきおこす。一方で、in vitroにおける増殖能はむしろ低下する。 (2)In vivoにおける肺転移巣形成能はHAI-1欠失により亢進し、これはrecombinant HAI-1 first Kunitz domainによって抑制できた。 これらの結果は、HAI-1が上皮細胞の完全性維持において重要な役割を有することを示している。
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