研究概要 |
ENUミュータジェネシスにより得られたミュータントマウスの遺伝子異常を全ゲノムレベルで解析し、我々が得たミュータントマウスはCa非依存性PLA2ベータ(iPLA2β、Pla2g6)に点突然変異を持つことを発見し、同マウスラインを樹立した(Pla2g6-inad)。Pla2g6-inadマウスの表現型、病理学的特徴、さらに酵素活性等を解析し、世界で最初の同遺伝子に点突然変異を持つヒト乳児軸索ジストロフィーのよいモデルとしてAmerican Journal Pathologyに投稿し受理された。本年はさらに同マウスの免疫学的な異常として末梢リンパ組織におけるNKT細胞の増加現象について解析を行った。胸腺ではCD4,CD8陽性のT細胞が著減しており、そのことによる2次的な影響である可能性が考えられた。そこでPla2g6-inadマウスの骨髄細胞を放射線照射した正常マウスに入れる、あるいはT細胞不全マウスにPla2g6-inadマウスの胸腺組織を移植する実験を行った。その結果、Ca非依存性PLA2ベータの異常だけではNKT細胞のポピュレーションに変化は生じず、やはりNKT細胞の変化は2次的なものであることが示唆された。また、Dr.Susan Hayflickとの共同研究で、ヒトINAD患者の末梢血を解析したところコントロールに比しNKT細胞の増加が見られた。そこで、ヒトでも似たような血液病態が存在することが示唆された。
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