(1)ガメトサイト分化誘導過程で2-Cys型Prxが果たす役割の解析 ローデントマラリア原虫をマウスで連続経代して、2-Cys型Prx遺伝子欠損(Prx KO)の表現型に類似して、ガメトサイト(生殖母体)形成能が変異(低下)した原虫を作製した。同原虫について、ガメトサイト分化誘導時期のタンパク質発現プロファイルを、二次元電気泳動法で親株のそれと比較した。差異が認められるスポットについてLC-MS/MSによる質量解析をおこない、表現型関連タンパクの同定を試みた。その結果、ガメトサイト形成能変異(低下)原虫では、Glycerol-3-phosphate dehydrogenase、L-laotate dehydrogenase、EnolaseおよびElongation factor 1 alphaの発現上昇とHSP70の発現低下が観察された。2-Cys型Prx遺伝子欠損原虫での同実験もおこない、現在各原虫間でのタンパク質発現プロファイルの比較解析を進めている。 (2)オーシスト発育過程で2-Cys型Prxが果たす役割の解析 2-Cys型Prxにはオーシスト核DNAの保護作用が考察されるが、その核への移行には他の分子との相互作用が必要と考えられる。今年度は、Prx核移行の確認と免疫沈降法を応用したPrx相互作用タンパク質の同定を目的に、GFPタグ付きのPrx分子を発現する遺伝子組換え原虫を作製した。融合タンパク質発現遺伝子とピリメタミン耐性変異型dhfrts(mt)マーカー遺伝子を野生型dhfrts(WT)locusに挿入してトランスジェニック原虫を作製した。限外希釈法でクローニングした赤内型トランスジェニック原虫の細胞質でのGFP発現を共焦点レーザー顕微鏡観察で確認した。現在、昆虫ステージでのGFP発現の観察実験と、Prx相互作用タンパク質の同定実験を進めている。
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