研究概要 |
微生物分類の裁定委員会の提出する意見として、分類学的に大腸菌と赤痢菌の4菌種が同じ種であることを検証する証拠となるデータを蓄積した。両属に所属する菌種の16S rDNA、ropB, GyrB、およびDnaJ配列を決定し、Shigella属の4菌種がEscherichia coliの0抗原型160標準株のdnaJ多型の中に完全に入り込む事を証明した。病原性大腸菌の中で志賀毒素を出す株とShigella dysenteriaeは同じであり、組織侵入性大腸菌とShigella flexneri, S. sonnei,およびS. boydiiは実質的に同じ病原因子を保有している。 病原性大腸菌の多くは旧来の生化学的同定法を使って同定している検査現場では見逃されている。Shigella属の4菌種をEscherichia coliとし、病原因子を保有する株を識別する検査方法を導入することは、現在、検査対象から漏れている病原性大腸菌を病原因子の保有の有無で見分ける正しい検査体勢を導入するための重要な一歩となる。 乳糖を分解する株が多い出血性大腸菌0157は病原性大腸菌を乳糖分解の有無で識別する検査方法では識別できないためソルビトールで識別する培地が開発され汎用されるようになった。しかし0157以外の出血性大腸菌をすべてスクリーニングする方法は開発されていない。このように生化学的性状で分離鑑別する手法をでは見逃しのない検査法は構築できないため直接病原因子の保有を検査する方法を推進するためには分類体系を再構築する必要がある。今後はIUMS国際会議札幌2011年の裁定委員会に向けて命名規約上で保存名になっているShigella属の分類規約の変更申請を行う。
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