研究概要 |
大腸菌は細菌のゲノム解析で最もよく研究された菌種であるため、菌種内の株の遺伝子多型を計測するための全ゲノム配列が多数集積している。これに対して大腸菌の属するEscherichia属の他の菌種のE.albertii, E.furgsonii, E.vulneris, E.blattae、E.harmaniおよびShigella属の4菌種、類縁のCitrobacter属の菌種のゲノム情報の蓄積は少なく、属内の菌種の株の多型情報は蓄積されていなかった本研究ではEscherichia属のみならず腸内細菌科の菌に共通は遺伝子としてhouse keeping genesに的を絞り、約300遺伝子の多形を計算した。その結果、Escherichia coliとShigella属の4菌種は同一種、E.albertii、E.furgsoniiはEscherichia属内の独立種、E.vulneris、E.blattae、E.harmaniiはEscherichia属から分離し独立した属に分類すべきであることがわかった、Escherichia coliとShigella属の4菌種が同じ種であるとの見解はこれまで多くの分類学者が言及してきたが、全ゲノムレベルン情報の比較でその同一性が検証できたため、今後は裁定委員会に提案し審議事項に取り上げてもらうように申請する計画でいる。 ボツリヌス菌はA,B,C,D,E,Fと異なった毒素を出す一つの菌種として分類されている。しかしA,B,E,Fの毒素型のボツリヌス菌は2つの異なった16S rRNAの系統の菌種から構成され、C,D型菌も独立した菌種であると報告されてきた。house keeping genesの解析でも従来からの見解道理、16S rRNAのデータを支援するデータが蓄積された。今後はClostridium botulinumの類縁菌種であるC.sporogenes、C.baratii,のhouse keeping genesの多型を計測し、ボツリヌス菌の再分類を裁定委員会に提案する計画でいる。 高度病原体の命名の変更は法律の書き換え、同定にあたる実務者の業務に対する影響など社会的に大きな影響を与える。分類学的な正当性だけではなく社会的な対応策が十分に取れる体制を作って、混乱が起きない対応を取ったのち、裁定員会に提案する計画でいる。
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